嫡出子と非嫡出子の相続格差を定めた民法を違憲判断
最高裁判所は平成25年9月4日の裁判で結婚していない両親の間に生まれた非嫡出子(婚外子)の相続格差を定めた民法の規定について、憲法違反とする決定を下した。
民法第900条4号ただし書き
『嫡出でない子の相続分は嫡出である子の相続分の二分の一とし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする』という嫡出子と非嫡出子の相続格差が存在する。
しかし今回、最高裁判所は「子どもは婚外子という立場をみずから選ぶことも取り消すこともできない」と指摘。家族のあり方が多様化している中で、非嫡出子を差別する根拠は失われたと判断した。法の下の平等を保障した「憲法14条1項」に違反。
これまで最高裁判所が法律の規定そのものを憲法違反としたケースでは、いずれもその後に法律改正が行われている。非嫡出子に関する相続規定についても、これから改正が行われるとみられる。そうなると、非嫡出子は親の遺産を相続する際に、嫡出子と同じ権利を得ることになる。
現行 改正
嫡出子の金額の50% 嫡出子の金額と同額
ところで、子どもには親の扶養義務があるが、非嫡出子の場合この扶養義務はどうなのか。法律が改正されることで、扶養義務にも変化があるのか。「直系血族の扶養義務」は民法で定められている。子が親を扶養する義務は、嫡出子しか負わないと、誤解している人も多いと思いますが、しかし
民法第877条 「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。」
親族間の扶養義務を定めています。そして、『直系血族』については、嫡出子か非嫡出子かを区別していません。したがって、嫡出子も非嫡出子も同等に、直系血族、つまり親を扶養する義務を負います。このことは、成人の子の認知について定めた民法第782条からうかがえます。
民法第782条 『成人の子はその承諾がなければ、これを認知することができない』と
規定し、親が子に一方的に扶養義務を負わせることを阻止しています。
このことから、非嫡出子も親を扶養する義務を負っていることがわかります。つまり、非嫡出子の相続規定が違憲とされるはるか前から、非嫡出子にも親の扶養義務があるとされていたのだ。したがって、法定相続分について嫡出子と非嫡出子を区別する法律が、両者を平等に扱う法律に改正されても、親子の相互扶養義務に変更はない。
これまでの民法によれば、嫡出子と非嫡出子は同等に親を扶養する義務を負うのに、非嫡出子の法定相続分は嫡出子の半分とされていました。この点だけをみても、明らかに不平等な法律であったことがわかります。
いつから憲法違反をしているのか
今回の憲法違反の判決がでた平成13年7月当時においては、立法府の裁量権を考慮しても、嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を区別する合理性な根拠は失われていたというべきである。したがって、本件規定は、遅くとも平成13年7月当時において、憲法14条1項に違反していたものというべきである。
民法の改正前はどうなるのか
民法が実際に改正されるには時間がかかるわけですが、最高裁判所判例には事実上の法定拘束力がありますので、現時点で未決着の相続事件や今後発生する相続事件については、今回の違憲判断が適用され、婚外子の相続分も嫡出子と同じとして扱われることとなります。つまり、関係者間の法律関係が確定的なものになったといえる段階に至っていない事案であれば、今回の判断によって違憲無効とされた民法第900条4号ただし書きの規定の適用を排除した上で対処することになります。今回の違憲判断は平成13年7月~今回の間に開始された他の相続につき、民法900条4号ただし書きの規定を前提としてされた遺産の分割の審判その他の裁判、遺産の分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものではない。として、本決定の効力が過去の相続に遡って影響しないとしています。今回の違憲判断が、すでに行われた遺産の分割等の効力にも影響して、解決済みの事案に効果が及ぶとすることは、著しく法的安定性を害することとなるためです。具体的に言えば、既に決着済みの事案につき、従来の相続の枠組みに従って法定相続分を差別的に取り扱われた婚外子が遺産分割のやり直しを求めたり、さらには、相続後に第三者の手に渡った相続財産の取り戻しを求めたりするような動きが多発して混乱を招く結果となることを防止するための措置と考えられています。しかし、従前の制度の枠の中で、差別的な取り扱いを甘んじて受け入れてきた婚外子も多数存在するわけであり、混乱を避けるという最高裁判所の考え方に合理性があるとしても、この判断部分にはやりきれない思いを抱いた婚外子も大勢いると思われ、法改正での落とし所が難しそうです。
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